情報システムの運用(第3回)

企業活動 (2)(ストラテジ系・企業と法務)


配布資料

第3回(問1~問15)
解答なし解答あり解説(要ID・パスワード)

訂正

(なし)


中分類1 「企業活動」

【位置付け】

表: ITパスポート出題範囲(ストラテジ系)
共通キャリア・スキルフレームワーク 出題範囲(出題の考え方)
分野 大分類 中分類





1企業と法務 1企業活動
  • 企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を問う。
  • 身近な業務を分析し,課題を解決する手法や,PDCA の考え方,作業計画,パレート図などの手法を問う。
  • 業務フローなど業務を把握する際のビジュアル表現について問う。
  • 財務諸表,損益分岐点など会計と財務の基本的な考え方を問う。
2法務
  • 知的財産権(著作権法,産業財産権関連法規など),セキュリティ関連法規(不正アクセス禁止法など),個人情報保護法,労働基準法,労働者派遣法など,身近な職場の法律を問う。
  • ライセンス形態,ライセンス管理など,ソフトウェアライセンスの考え方,特徴を問う。
  • コンプライアンス,コーポレートガバナンスなど,企業の規範に関する考え方を問う。
  • 標準化の意義を問う。
2経営戦略 3経営戦略マネジメント
  • SWOT 分析,プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM),顧客満足度,CRM,SCM などの代表的な経営情報分析手法や経営管理システムに関する基本的な考え方を問う。
  • 表計算ソフト,データベースソフトなどオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)の利用に関する理解を問う。
4技術戦略マネジメント
  • 技術開発戦略の意義,目的などに関する理解を問う。
5ビジネスインダストリ
  • 電子商取引,POS システム,IC カード・RFID 応用システムなど,各種ビジネス分野での代表的なシステムの特徴を問う。
  • エンジニアリング分野や電子商取引での代表的なシステムの特徴を問う。
  • 情報家電や組込みシステムの特徴,動向などを問う。
3システム戦略 6システム戦略
  • 情報システム戦略の意義と目的,戦略目標,業務改善,問題解決などに向けた考え方を問う。
  • 業務モデルにおける代表的なモデリングの考え方を問う。
  • コミュニケーションにおけるグループウェアやオフィスツールなどの効果的な利用について問う。
  • コンピュータ及びネットワークを利用した業務の効率化の目的,考え方について問う。
  • クラウドコンピューティングなど代表的なサービスを通じて,ソリューションビジネスの考え方を問う。
  • システム活用促進・評価活動の意義と目的を問う。
7システム企画
  • システム化計画の目的を問う。
  • 現状分析などに基づく業務要件定義の目的を問う。
  • 見積書,提案依頼書(RFP),提案書の流れなど調達の基本的な流れを問う。

【小分類】

小分類1 「経営・組織論」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 企業活動と経営資源
企業活動と経営資源に関する基本的な考え方を理解する。
①企業活動
企業活動の目的を理解する。
用語例:経営理念(企業理念),株主総会,決算,社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility),ディスクロージャ,監査,グリーンIT
②経営資源
経営におけるヒト,モノ,カネ,情報に対する管理の意義と必要性を理解する。
用語例:OJT,Off-JT,CDP(Career Development Program),コーポレートブランド,ステークホルダ,ワークライフバランス,メンタルヘルス
(2) 経営管理
経営管理に関する基本的な考え方を理解する。
用語例:経営目標,財務・資産・人事・情報管理,PDCA(plan:計画,do:実行,check:評価,act:改善),BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画),BCM(Business Continuity Management:事業継続管理),MBO(Management by Objectives:目標による管理)
(3) 経営組織
基本的な経営組織を理解する。
用語例:階層型組織,事業部制,機能別組織,職能別組織,マトリックス組織,プロジェクト組織,カンパニ制,持株会社,最高経営責任者(CEO:Chief Executive Officer),最高情報責任者(CIO:Chief Information Officer)

小分類2 「OR・IE」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 業務の把握
業務内容を把握するために,業務フローなどのビジュアル表現を活用する。
(2) 業務分析と業務計画
図式などの代表的な手法を用いて,業務分析や業務計画を行う。
用語例:パレート図,ABC分析,PERT(アローダイアグラム),クリティカルパス分析,散布図,レーダチャート,管理図,ヒストグラム,回帰分析
活用例:表やグラフによるデータ分析,パレート図や回帰分析を使った業務改善
(3) 意思決定
問題を解決するための意思決定を効率的に行う。
用語例:特性要因図(フィッシュボーンチャート),シミュレーション,在庫管理,与信管理,発注方式
活用例:与えられた条件の下での意思決定,在庫管理を題材にした業務把握
(4) 問題解決手法
問題を解決するための基本的な手法について,考え方を理解する。
用語例:ブレーンストーミング,デシジョンツリー,親和図法

小分類3 「会計・財務」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 会計と財務
売上と利益の関係を理解する。
①売上と利益の関係
用語と考え方を理解する。
用語例:利益,粗利益,営業利益,損益分岐点,原価,変動費,固定費,販売量,変動費率
活用例:損益分岐点や利益率などの簡単な計算
②財務諸表の種類と役割
企業における損益計算書などの財務諸表や勘定科目などの種類と役割について理解する。
用語例:貸借対照表,キャッシュフロー計算書,資産(純資産,流動資産,固定資産,繰延資産,有形資産,無形資産),負債(流動負債,固定負債),流動比率,収益性,投資利益率
活用例:基本的な財務諸表の読み方と財務指標(安全性,収益性など)を活用した分析

小分類1 「経営・組織論」

(詳細は前回)


小分類2 「OR(Operations Reasearch)IE(Industrial Engineering)

(詳細は前回)

意思決定

在庫管理

在庫管理の代表的な方法として,定期発注方式定量発注方式(発注点方式)二瓶法(ダブルビン法,二棚法)がある。

定期発注方式 一定期間ごとに発注する方式。
発注量は,在庫量の調査を行い,調査結果にもとづき毎回計算して決定する。
長所は,在庫量を少なくすることができる。
短所は,事務処理が多い。
対象は,需要変動が大きいもの,単価が高いもの,手配期間が長いものなどで,ABC分析ではAグループの商品。
発注量
= ( 発注間隔 + 調達期間 ) × 1日あたりの使用予定量 + 安全在庫 - 現在の在庫量 - 現在の発注残
定量発注方式
(発注点方式)
在庫量があらかじめ定めた一定の量(発注点)を下回ったら発注する方式。
発注量は,あらかじめ定めた一定量(経済的発注量)。
経済的発注量とは,発注費用と在庫費用の総額を最小化する1回あたりの発注量。
長所は,事務処理が少ない。また,欠品が発生し難い。
短所は,在庫量が多くなる。
対象は,需要が安定しているものや共通の部品,単価が安いもの,手配期間が短いものなどで,ABC分析ではBグループの商品。
発注点
= 調達期間中使用量 + 安全在庫
= 1日あたりの平均使用量 × 調達日数 + 安全在庫
二瓶法
(ダブルビン法,二棚法)
2つの入れ物(または棚)を用意して,片方の入れ物の在庫が切れた時点で,発注する方式。
管理の手間があまりかからないので,ABC分析のCグループの商品に対して適用される。

棚卸

棚卸高(棚卸時の在庫の資産価格)の代表的な計算方法には,先入先出法後入先出法個別法平均原価法売上還元法がある。

先入先出法 先に仕入れた商品から順に販売される(在庫は後に仕入れた新しい商品からなる)と仮定して,在庫の価格を計算する方法。
後入先出法 後に仕入れた商品から順に販売される(在庫は先に仕入れた古い商品からなる)と仮定して,在庫の価格を計算する方法
(会計基準の変更により2010年4月1日に廃止されたため,この方法は現在は使えない)
個別法 個々の商品の取得原価にもとづいて,在庫の価格を計算する方法。
移動平均法 仕入の度に,以下の式で商品の単価を計算する方法。
単価
= ( 在庫金額 + 仕入金額 ) ÷ ( 在庫個数 + 仕入個数 )
総平均法 期末に,以下の式で商品の単価を計算する方法。
単価
= ( 期首在庫金額 + 当期仕入金額合計 ) ÷ ( 期首在庫個数 + 当期仕入個数合計 )
売価還元法 商品の値入率(販売価格と原価の差額の販売価格に対する比率)と回転率によりグループ分けして,グループごとに販売価格の合計に原価率を乗じて,在庫の価格を計算する方法。
値入率
= ( 販売価格 - 原価 ) ÷ 販売価格
原価率
= 原価 ÷ 販売価格
= ( 期首繰越商品原価 + 当期受入原価総額 ) ÷ ( 期首繰越商品小売価額 + 当期受入原価総額 + 原始値入額 + 値上額 - 値上取消額 - 値下額 + 値下取消額 )

小分類3 「会計・財務」

会計と財務

損益分岐点

[損益分岐点]

売上高により,損失と利益が分岐する点。 損益分岐点では,以下の式が成立する。

売上高
= 固定費 + 変動費
= 固定費 + 売上高 × 変動費率

売上高が,損益分岐点を下回れば損失が出て,上回れば利益が出る。

変動費 売上に比例してかかる費用。
具体的には,材料費,運送費 など。
固定費 売上にかかわらず一定の費用。
具体的には,人件費,店舗の家賃・光熱費,広告費 など。
変動費率 売上高に対する変動費の比率。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高

財務諸表

貸借対照表
(Balance Sheet,B/S)
一定時期(決算日)における企業の資産,負債及び純資産を記載することで,企業の財政状況を表す。
損益計算書
(Profit and Loss statement,P/L)
会計期間における収益と費用の明細とその期間における純利益(又は純損失)を記載することで,企業の経営成績を表す。
キャッシュフロー計算書
(Cash Flow statement,C/F)
会計期間における資金(現金及び普通預金,定期預金など現金と同等のもの)の増減を営業活動・投資活動・財務活動に区分して記載することで,企業の資金体質を表す。
株式資本等変動計算書
(Statements of Shareholders' Equity,S/S)
貸借対照表の純資産の部の変動状況を示す財務諸表。
純資産を株主資本,評価・換算差額等,新株予約権,少数株主持分の4つに区分して,それぞれの内訳及び増減額を記載する。
なお,少数株主持分は連結会計の場合のみ記載する。

貸借対照表(Balance Sheet,B/S)

資産の部 負債の部
I. 流動資産
II. 固定資産
III. 繰延資産
I. 流動負債
II. 固定負債
純資産の部
I. 株主資本
II. 評価・換算差額等
III. 新株予約権
(IV. 少数株主持分)

貸借対照表の左側の欄を貸方(debit)と呼び,右側の欄を借方(credit)と呼ぶ。 貸方の合計と借方の合計は等しくなる。

資産 = 負債 + 純資産

損益計算書(Profit and Loss statement,P/L)

売上高 A  
売上原価 B  
売上総利益 C = A - B
販売費及び一般管理費 D  
営業利益 E = C - D
営業外収益 F  
営業外費用 G  
経常利益 H = E + F - G
特別利益 I  
特別損失 J  
税引前当期純利益 K = G + I - J
法人税 L  
当期純利益 M = K - L
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税

キャッシュフロー計算書(Cash Flow statement,C/F)

I. 営業キャッシュフロー
II. 投資キャッシュフロー
III. 財務キャッシュフロー
IV. 現金及び現金同等物の増減
V. 現金及び現金同等物の期首残高
VI. 現金及び現金同等物の期末残高
現金及び現金同等物の増減 = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー + 財務キャッシュフロー
現金及び現金同等物の期末残高 = 現金及び現金同等物の期首残高 + 現金及び現金同等物の増減

資産

資産 = 流動資産 + 固定資産 + 繰延資産
流動資産 流動資産とは1年以内に現金化・費用化ができる資産。
具体的には,現金,当座預金,受取手形,売掛金,商品,消耗品,前払金,未収金,貸付金,立替金 など。
固定資産 1年以上継続的に会社で使用や運用する資産。
有形固定資産(建物,備品,土地 など)と無形固定資産(営業権,特許権 など)がある。
繰延資産 会社が支出した費用のうち,現金化・費用化できないがその支出の効果が1年以上におよぶもの。
具体的には,以下の5種類。
  1. 創立費:設立登記までに要した費用(発起人への報酬,設立登記の登録免許税 など),償却期間 5年
  2. 開業費:設立登記後営業開始までに要した費用,償却期間 5年
  3. 開発費:新技術,新資源の開発,新市場の開拓に要した費用,償却期間 5年
  4. 株式交付費:会社設立後,新たに株式を発行するために要した費用,償却期間 3年
  5. 社債発行費:社債発行に要した費用,償却期間 社債の償還期限内

負債

負債は他人資本と呼ばれることもある。

負債 = 流動負債 + 固定負債
流動負債 支払期限が1年以内に到来する負債のこと。
具体的には,買掛金,支払手形,未払金,(1年以内に返済する)短期借入金 など。
固定負債 支払期限が,1年以上経過した後に到来する負債のこと。
具体的には,社債,転換社債,(返済期限が1年以上の)長期借入金,(1年以上先に支払われる予定の)退職給与引当金(従業員への退職一時金や,退職年金のための引当金) など。

純資産

純資産は自己資本と呼ばれることもある。 また,過去では単なる資本と呼ばれていた。

純資産 = 株主資本 + 評価・換算差額等 + 新株予約権 (+ 少数株主持分)
  1. 株主資本:(1) 資本金,(2) 新株式申込証拠金,(4) 利益剰余金,(5) 自己株式,(6) 自己株式申込証拠金 のいずれか。
  2. 評価・換算差額等:その他有価証券評価差額金,繰延ヘッジ損益,土地再評価差額金 など。
  3. 新株予約権
  4. 少数株主持分(連結会計の場合のみ)

その他

• 流動比率
安全性分析の一指標で,流動負債を流動資産がどの程度カバーしているかを示す比率。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
この比率が高いほど,短期的な資金繰りに余裕があることを示す。
流動比率が100%以下であれば,短期的な支払のために,長期負債や純資産が使用されていることになる。
流動比率が200%以上あることが安心の目安といわれている(2:1の原則)。
• 収益性
いくらの元手(資本)を使って,いくらの儲け(利益)を出しているかを示す比率。
一般的に資本利益率によって説明される。
資本利益率
= 利益 ÷ 資本
= 売上高利益率 ( 利益 ÷ 売上高 ) × 資本回転率 ( 売上高 ÷ 資本 )

用語

OR(Operations Reasearch,オペレーションズリサーチ)
数理的なアプローチで合理的な解決策を見つけ出す手法。
線形計画法,PERT(Program Evaluation and Review Technique,パート),ゲーム理論の待ち行列などが代表例。
IE(Industrial Engineering,インダストリアルエンジニアリング)
経営資産の有効活用を科学的・工学的に図る諸活動のこと,及び,その方法を研究する学問分野。

すぎうら しげき <>