情報システムの運用(第6回)

経営戦略マネジメント,技術戦略マネジメント(ストラテジ系・経営戦略)


配布資料

第6回(問1~問19)
解答なし解答あり解説(要ID・パスワード)

訂正

(なし)


中分類3 「経営戦略マネジメント」

【位置付け】

表: ITパスポート出題範囲(ストラテジ系)
共通キャリア・スキルフレームワーク 出題範囲(出題の考え方)
分野 大分類 中分類





1企業と法務 1企業活動
  • 企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を問う。
  • 身近な業務を分析し,課題を解決する手法や,PDCA の考え方,作業計画,パレート図などの手法を問う。
  • 業務フローなど業務を把握する際のビジュアル表現について問う。
  • 財務諸表,損益分岐点など会計と財務の基本的な考え方を問う。
2法務
  • 知的財産権(著作権法,産業財産権関連法規など),セキュリティ関連法規(不正アクセス禁止法など),個人情報保護法,労働基準法,労働者派遣法など,身近な職場の法律を問う。
  • ライセンス形態,ライセンス管理など,ソフトウェアライセンスの考え方,特徴を問う。
  • コンプライアンス,コーポレートガバナンスなど,企業の規範に関する考え方を問う。
  • 標準化の意義を問う。
2経営戦略 3経営戦略マネジメント
  • SWOT 分析,プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM),顧客満足度,CRM,SCM などの代表的な経営情報分析手法や経営管理システムに関する基本的な考え方を問う。
  • 表計算ソフト,データベースソフトなどオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)の利用に関する理解を問う。
4技術戦略マネジメント
  • 技術開発戦略の意義,目的などに関する理解を問う。
5ビジネスインダストリ
  • 電子商取引,POS システム,IC カード・RFID 応用システムなど,各種ビジネス分野での代表的なシステムの特徴を問う。
  • エンジニアリング分野や電子商取引での代表的なシステムの特徴を問う。
  • 情報家電や組込みシステムの特徴,動向などを問う。
3システム戦略 6システム戦略
  • 情報システム戦略の意義と目的,戦略目標,業務改善,問題解決などに向けた考え方を問う。
  • 業務モデルにおける代表的なモデリングの考え方を問う。
  • コミュニケーションにおけるグループウェアやオフィスツールなどの効果的な利用について問う。
  • コンピュータ及びネットワークを利用した業務の効率化の目的,考え方について問う。
  • クラウドコンピューティングなど代表的なサービスを通じて,ソリューションビジネスの考え方を問う。
  • システム活用促進・評価活動の意義と目的を問う。
7システム企画
  • システム化計画の目的を問う。
  • 現状分析などに基づく業務要件定義の目的を問う。
  • 見積書,提案依頼書(RFP),提案書の流れなど調達の基本的な流れを問う。

【小分類】

小分類9 「経営戦略手法」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 経営情報分析手法
経営戦略のための情報活用に関する代表的な手法を理解し,分析結果を活用する。
用語例:SWOT(Strengths:強み,Weaknesses:弱み,Opportunities:機会,Threats:脅威)分析,PPM(Product Portfolio Management),外部環境,内部環境,3C分析
活用例:分析手法を使った販売・市場・製品分析
(2) 経営戦略に関する用語
経営戦略に関する代表的な用語を理解する。
用語例:競争優位,顧客満足度,コアコンピタンス,アライアンス,アウトソーシング,M&A(Mergers and Acquisitions),OEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランド製造),ファブレス,フランチャイズチェーン,経験曲線,MBO(Management Buyout:経営陣による自社買収),TOB(Take Over Bid:公開買付け),規模の経済,垂直統合,ニッチ戦略,ベンチマーキング,ロジスティクス
(3) オフィスツールの利用
表計算ソフト,データベースソフト,プレゼンテーションソフトなどのオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)を,担当業務の問題解決や効率化を図るために活用する。
活用例:利用目的に応じたツールの選択,データの整理・検索・分析・加工・表現のためのツールの利用

小分類10 「マーケティング」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) マーケティングの基礎
マーケティングに関する基本的な考え方と情報活用を理解する。
用語例:市場調査,販売・製品・仕入計画,販売促進,顧客満足,4P・4C,RFM(Recency:最終購買日,Frequency:購買頻度,Monetary:累計購買金額)分析,アンゾフの成長マトリクス,オピニオンリーダ,セグメントマーケティング,ダイレクトマーケティング,プッシュ戦略,ブランド戦略,プロダクトライフサイクル,ポジショニング
活用例:顧客分析を題材とした販売促進

小分類11 「ビジネス戦略と目標・評価」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) ビジネス戦略立案及び評価のための情報分析手法
ビジネス戦略の立案に関し,目標設定及び評価のための基本的な情報分析手法と用語を理解する。また,企業理念としてのミッションと,企業のありたい姿としてのビジョンの概念を理解する。
用語例:BSC(Balanced Score Card:バランススコアカード),CSF(Critical Success Factors:重要成功要因),KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標),KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標),バリューエンジニアリング
活用例:基本的な情報分析手法を使った業務分析

小分類12 「経営管理システム」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 経営管理システム
経営管理システムに関する基本的な用語と考え方を理解する。
用語例:CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理),バリューチェーンマネジメント,SCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理),TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)・TQM(Total Quality Management:総合的品質管理),ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)パッケージ,シックスシグマ,ナレッジマネジメント,TOC(Theory Of Constraints:制約理論)

小分類9 「経営戦略手法」

1. 経営情報分析手法

1.1 SWOT(Strengths:強み,Weaknesses:弱み,Opportunities:機会,Threats:脅威)分析

SWOT分析は,経営戦略の立案時に企業を取り巻く経営環境を分析するための手法。

SWOT分析では,強みStrengths),弱みWeaknesses),機会Opportunities),脅威Threats)の4つのカテゴリから企業の置かれている経営環境を分析する。

表: SWOT分析の4つの観点
  促進要因 阻害要因
内部環境 強み
Strengths)
弱み
Weaknesses)
外部環境 機会
Opportunities)
脅威
Threats)

強み弱み内部環境分析の観点,機会脅威外部環境分析の観点とする。

内部環境は,自社の有形・無形の経営資源を対象として,目的達成の促進要因になるなら強み,阻害要因になるなら弱みに分類する。 内部環境の具体例には,資金,人材,商品力,技術力,販売力,コスト体質,評判・ブランド,意思決定力などがある。

外部環境は,将来影響を受ける可能性のある社外の各種要因を対象として,目的達成の促進要因になるなら機会,阻害要因になるなら脅威に分類する。 外部環境にはマクロ要因(社会全体の大局的な要因)とミクロ要因(企業周辺の局所的な要因)との2種類があり,マクロ要因の具体例には,政治・経済,社会情勢,技術進展,法的規制などがあり,ミクロ要因の具体例には,市場規模・成長性,顧客の価値観,価格の傾向,競合他社,協力会社などがある。

表: 内部環境と外部環境
内部環境 自社の有形・無形の経営資源
資金,人材,商品力,技術力,販売力,コスト体質,評判・ブランド,意思決定力など
外部環境 将来影響を受ける可能性のある社外の各種要因
(マクロ要因)政治・経済,社会情勢,技術進展,法的規制など
(ミクロ要因)市場規模・成長性,顧客の価値観,価格の傾向,競合他社,協力会社など

1.2 プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM:Product Portfolio Management)

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM:Product Portfolio Management)とは,複数の製品・事業を扱っている企業が最適な製品・事業の組合せ(ポートフォリオ)を決定するための手法。 各製品・事業の状況を把握し,どの製品・事業に経営資源を重点的に配分すべきかを検討する。

市場占有率を横軸に,市場成長率を縦軸にとり,それぞれの高低の組合せから領域を以下の4つに区分して,各製品・事業を売上高に対応した大きさをもつ円としてプロットしてプロダクトポートフォリオマトリックス(PPMマトリックス図)を作成し,検討することにより各製品・事業を育成・維持・収穫・撤退すべきかを検討する。

表: PPMの4つの区分
名称 市場
占有率
市場
成長率
説明
花形製品 継続的な投資が必要なため大きな利益は生み出しにくいが,中長期的には金のなる木への移行が期待できる。
金のなる木 積極的な投資が必要ないため安定的に利益を生み出す。
問題児 現在の利益は大きくないが,今後の投資次第では利益の拡大が望める。
負け犬 今後も新たな投資を行うことが難しく,適切なタイミングで供給の終了を検討すべき。

[プロダクトポートフォリオマトリックスの例]
図: プロダクトポートフォリオマトリックスの例

2. 経営戦略に関する用語

2.1 各種経営戦略

• コアコンピタンス
他社にまねのできない独自のノウハウや技術など,企業の核となる強み。
• コアコンピタンス経営
コアコンピタンスに経営資源を集中し,競争優位を確立すること。

用語 説明
M&A
(Mergers&Acquisitions:企業の合併・買収)
企業の合併・買収のこと。
狭い意味では,企業全体の合併・買収だけを指す。
広い意味では,一部営業譲渡や資本提携なども含めた広い意味での企業提携のことを総称し,株式譲渡・新株引受・株式交換,営業譲渡,合併,会社分割などのさまざまな手法がある。
競合企業に対して優位に立つために,既に事業を確立している他社の経営資源を獲得するという経営戦略である。
MBO
(Management Buyout:経営陣による自社買収)
経営陣が,親会社や株主などから株式と経営権を買収して,独立すること。
経営陣単独での資金調達が難しい場合には,ファンドや金融機関などと協力して行うことがある。
アライアンス
(Alliance:企業提携)
企業間の提携のことで,業務提携(技術提携や生産提携,販売提携など)や資本提携などの形態がある。
アライアンスにより,自社にない経営資源を他社から得ることにより新規事業を立ち上げたり,自社だけでは不足している経営資源を他社から調達することにより事業規模を拡大したりすることができる。
アライアンスの最大のメリットは,自社の投資負担を抑えることである。
技術提携 2社以上の企業が,互いに,または,一方から他方へ重要な技術を提供したり,共同して新規の技術開発に取り組むなどをする提携関係のこと。
• アウトソーシング
特定の業務内容について社外へ委託すること。
利点としては,社内の業務を減らすことにより従来の業務に専念できたり,新規業務に対応する余裕ができたりする。
また,専門業者に委託する場合には,自社で対応していた場合より品質の高い対応が可能になる。
• R&D(Research and Development)
企業の研究・開発業務および部門のこと。
• ファブレス(Fabless)
自社では工場を所有せず,製品の企画や設計のみを行い,製品の製造自体は外部に委託する企業形態。
Fab(Fabrication facility:組立設備=工場)+less(ない)という造語。
• OEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランド製造)
相手先の商標やブランドで製品を製造し,供給すること。
• EMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器製造受託サービス)
電子機器製品の設計,試作,製造を一括して生産受託するサービスのこと。
従来のEMSでは,製品の製造のみを受託することが多かったが,最近では製品の設計,試作,製造を一括して受託するケースが増えている。
• SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel:製造小売)
製品の企画から製造,販売までの機能を垂直統合した製造小売業のこと。
アパレル業界で生まれた業態であるが,近年は製造小売業全般を意味する場合もある。
• BPR(Business Process Reengineering)
現状の業務プロセスを抜本的に改善・改革すること。
• ERP(Enterprise Resource Planning)
企業全体の経営資源を有効かつ総合的に計画・管理し,経営の効率化を図るための手法。
具体的には,販売,生産,会計,人事などの業務で発生するデータを統合データベースで一元管理し,各業務部門の状況をリアルタイムに把握することにより実現する。
• MRP(Materials Requirements Planning,資材所要量計画)
完成品の販売量から,製造に必要となる各種原材料の必要量を計算して,在庫情報と納期を考慮することで,原材料の発注量を算出する管理方式,及び,その管理を行うシステム。
• リテールサポート(Retail support)
メーカ・卸売業者が,小売店の経営活動を支援してその売上と利益を伸ばすことによって,自社との取引拡大につなげる方法。

2.2 代表的な役職

米国型の企業統治にもとづく役職名として,CEO,COO,CFO,CIOなどがある。

役職 説明
最高経営責任者(CEO:Chief Executive Officer) 経営の方針や戦略の決定を行い,最終責任を負う。
最高執行責任者(COO:Chief Operating Officer) CEOの決定した経営の方針や戦略を実際に執行して,会社を運営する。
最高財務責任者(CFO:Chief Financial Officer) 自社の資金効率の向上,及び財務会計の正確性を維持する。
最高情報責任者(CIO:Chief Information Officer) 経営戦略を実現するための情報戦略の立案及び実施を主導する。
• システム監査人
客観的な立場から,自社の業務に問題がないか,ITの統制が有効に機能しているかなどを監査する。

3. オフィスツールの利用

【ワープロソフト,表計算ソフト,データベースソフト,プレゼンテーションソフトなどのオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)を,担当業務の問題解決や効率化を図るために活用する。】


小分類10 「マーケティング」

1. マーケティングの基礎

1.1 市場調査

• データマイニング(Data Mining)
データベースに蓄積されている大量の生データに対し,統計やパターン認識などの手法を用いることによって,認識されていなかった規則性や関係性を導き出す技術。
データマイニングの代表的な応用例としては,「顧客に応じた商品の推薦」がある。過去の売り上げデータなどを分析して,顧客の新たなニーズや動向を明らかにする。

1.2 コトラーの競争戦略

企業を業界における競争地位を市場占有率に基づいて以下の4類型に分類し,それぞれに対して基本戦略を策定したもの。

分類 説明
① リーダー(Leader) 最大の市場占有率を有する企業。
② チャレンジャー(Challenger) リーダーに挑戦する業界の2番手,3番手の企業。
③ フォロワー(Follower) リーダーやチャレンジャーの戦略にそれほどコストをかけずに追随し,彼らと直接競合しないようにして二次的な市場を狙う企業。
④ ニッチャー(Nicher) 市場のニッチ(穴場)を見出し,その限定された市場で独自の立場を築いていこうとする企業。

1.3 市場の細分化による戦略

対象の集団をどのように細分化するかで,以下のような戦略がある。

戦略 説明
マスマーケティング
(Mass marketing)
すべての顧客を対象として,画一化された方法を用いて行うマーケティング戦略・活動のこと。
大きな市場全体に対して,大量生産によるコストダウン,単一製品による流通の効率化などで,市場シェアを一気に確保する戦略。
セグメントマーケティング
(Segment marketing)
顧客を何らかの基準(性別,年齢,家族構成,職業,年収,趣味,購入歴など)でセグメント(Segment)に分類し,それぞれのセグメントに応じたマーケティング戦略・活動を行うこと。
市場が成熟化し,新規顧客獲得が困難となり,顧客のニーズが多様化した場合に有効となる戦略。
これは,優良顧客が売り上げ全体に大きな割合を占めていることが多いからである。
エリアマーケティング
(Area marketing)
日本で生まれた,顧客を「地域特性」(歴史や自然環境など)で分類し,それぞれの地域に応じたマーケティング戦略・活動を行うこと。
ワントゥワンマーケティング
(One to one marketing)
市場という集団を対象とするのではなく,個々の顧客ニーズに個別に対応するマーケティング戦略・活動のこと。

1.4 その他の市場戦略

その他の市場戦略として,以下のようなものがある。

戦略 説明
ニッチ戦略 商品市場での過当な競争を避け,まだ顧客のニーズが満たされていない市場のすきま,すなわち市場のセグメントに焦点を合わせた事業展開で,競争優位を確保しようとする企業戦略。
プッシュ戦略 営業をかけての売り込みを行ったり,販売店などにインセンティブ(リベートなど)を与えるなどにより,自社製品の販売を強化してもらう戦略。
プル戦略 広告や宣伝などにより消費者へ直接働きかけて,自社製品への興味を引き出して需要を生み出す戦略。
ブランド戦略 企業や製品,サービスなどに対する顧客のブランドイメージを高め,他社との差別化を行うことで販売を拡大する戦略。

市場調査,販売・製品・仕入計画,販売促進,顧客満足


小分類11 「ビジネス戦略と目標・評価」

1. ビジネス戦略立案及び評価のための情報分析

1.1 バランススコアカード(BSC:Balance Score Card)

バランススコアカード(BSC:Balance Score Card)では,従来の財務的な視点だけではなく,①財務の視点,②顧客の視点,③業務プロセスの視点,④学習・成長の視点の4つの視点から総合的に業務評価・分析と管理を行う。

BSCの具体的な手順は,以下の2種類を書いている資料があるが,現在,どちらが正しいか調査中である。

BSCの手順(その1)
  1. 上記の4つの視点ごとに重要目標達成指数(KGI:Key Goal Indicator)を決定する。
  2. KGIの達成するために重要な成功要因である重要成功要因(CSF:Critical Success Factors)を策定する。
  3. CSFを具体化する重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定する。
  4. KPIを具体的なアクションへと変換する。
BSCの手順(その2)
  1. 上記の4つの視点ごとに戦略目標を決定する。
  2. 戦略目標の達成のために重要な成功要因である重要成功要因(CSF:Critical Success Factors)を策定する。
  3. CSFを具体化する重要目標達成指数(KGI:Key Goal Indicator)重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定する。
  4. KGIおよびKPIを具体的なアクションへと変換する。

この場合,CSF,KGI,KPIの関係は以下のとおり。

用語 概要 手順
重要成功要因
(CSF:Critical Success Factors)
BSCにおいて,戦略目標を実行する上でクリアすべき重要な成功要因。 戦略/戦術レベル,または,全社/部門レベルのように段階ごとに策定する。
重要目標達成指数
(KGI:Key Goal Indicator)
CSFがきちんと遂行されているかを定量的に測定する指標。 売上高,利益率,成約件数などを利用して,
目標(ゴール)に対してどの程度達成されたかを計測する。
重要業績評価指標
(KPI:Key Performance Indicator)
引き合い案件数,顧客訪問回数,歩留まり率,解約件数などを利用して,
プロセスの実行の度合(パフォーマンス)を測定する。

1.2 バリューエンジニアリング(VE:Value Engineering)

バリューエンジニアリングとは,製品やサービスの「価値」を「機能」と「コスト」の関係で把握し,体系化された手順によって価値の向上を図る手法。

「価値 = 機能 ÷ コスト」として定義し,企業体質の強化や収益力の向上のため,製品やサービスの「価値」を高めるための体系的な活動を行う(ここで,「機能」は顧客や利用者が求める製品やサービス,「コスト」はその機能の実現のためにかかる費用)。

具体的な手順は以下の通り。

  1. 顧客や利用者の立場で製品やサービスに求められる機能を分析する。
  2. 本当に必要な機能のみを選び出す。
  3. その機能を実現するためにかかるコストを分析する。
  4. 性能・信頼性・品質などに影響を与えずにコストを低減する方法について色々なアイディアを出し合い,機能を達成するための最適な方法を設計する。

1.3 付加価値分析(Value Added Analysis)

付加価値分析とは,投入した経営資源に対してどの程度の付加価値を生み出しているか,また,生み出した付加価値を利害関係者にどのように配分しているかなどを分析すること。

付加価値とは,企業活動によって新たに生み出された価値のことであり,人件費や企業利益などが該当する。


小分類12 「経営管理システム」

1. 経営管理システム

経営管理システムに関する重要な用語としては以下のようなものがある。

用語 説明
CRM
(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
企業内の顧客に関係するすべての部門で情報共有しながら,顧客とのやりとりを一貫して管理することにより,サービスのレベルを引き上げて顧客満足度を高め,顧客との関係を強化し,企業収益の向上にむすびつけていく手法。
VCM
(Value Chain Management:価値連鎖管理,
バリューチェーンマネジメント)
コンピュータを用いて,企業の提供する製品やサービスなどの価値を生み出すための業務の流れ(開発→資材調達→生産→販売→代金回収)を分析し,管理すること。
SCM
(Supply Chain Management:供給連鎖管理,
サプライチェーンマネジメント)
コンピュータを使用して,資材の受発注から製品の配送までの企業活動すべてを管理する手法。
原材料の調達,製造,流通,販売に至る一連の業務全体について,企業間を含めたモノの流れを総合的に管理することにより,リードタイムの短縮,余分な在庫の削減,コスト削減などを実現する。
TQC
(Total Quality Control:全社的品質管理)
不良品ゼロを目指した品質管理を,製造部門にとどまらず全社的な活動として取り組むこと。

中分類4 「技術戦略マネジメント」

【位置付け】

表: ITパスポート出題範囲(ストラテジ系)
共通キャリア・スキルフレームワーク 出題範囲(出題の考え方)
分野 大分類 中分類





1企業と法務 1企業活動
  • 企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を問う。
  • 身近な業務を分析し,課題を解決する手法や,PDCA の考え方,作業計画,パレート図などの手法を問う。
  • 業務フローなど業務を把握する際のビジュアル表現について問う。
  • 財務諸表,損益分岐点など会計と財務の基本的な考え方を問う。
2法務
  • 知的財産権(著作権法,産業財産権関連法規など),セキュリティ関連法規(不正アクセス禁止法など),個人情報保護法,労働基準法,労働者派遣法など,身近な職場の法律を問う。
  • ライセンス形態,ライセンス管理など,ソフトウェアライセンスの考え方,特徴を問う。
  • コンプライアンス,コーポレートガバナンスなど,企業の規範に関する考え方を問う。
  • 標準化の意義を問う。
2経営戦略 3経営戦略マネジメント
  • SWOT 分析,プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM),顧客満足度,CRM,SCM などの代表的な経営情報分析手法や経営管理システムに関する基本的な考え方を問う。
  • 表計算ソフト,データベースソフトなどオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)の利用に関する理解を問う。
4技術戦略マネジメント
  • 技術開発戦略の意義,目的などに関する理解を問う。
5ビジネスインダストリ
  • 電子商取引,POS システム,IC カード・RFID 応用システムなど,各種ビジネス分野での代表的なシステムの特徴を問う。
  • エンジニアリング分野や電子商取引での代表的なシステムの特徴を問う。
  • 情報家電や組込みシステムの特徴,動向などを問う。
3システム戦略 6システム戦略
  • 情報システム戦略の意義と目的,戦略目標,業務改善,問題解決などに向けた考え方を問う。
  • 業務モデルにおける代表的なモデリングの考え方を問う。
  • コミュニケーションにおけるグループウェアやオフィスツールなどの効果的な利用について問う。
  • コンピュータ及びネットワークを利用した業務の効率化の目的,考え方について問う。
  • クラウドコンピューティングなど代表的なサービスを通じて,ソリューションビジネスの考え方を問う。
  • システム活用促進・評価活動の意義と目的を問う。
7システム企画
  • システム化計画の目的を問う。
  • 現状分析などに基づく業務要件定義の目的を問う。
  • 見積書,提案依頼書(RFP),提案書の流れなど調達の基本的な流れを問う。

【小分類】

小分類13 「技術開発戦略の立案・技術開発計画」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 技術開発戦略・技術開発計画
将来的に市場での競争力を確保することを目的として,技術動向や製品動向を調査・分析し,自社が保有する技術を評価して,必要に応じて技術提携なども視野に入れた技術開発戦略が立案されることを理解する。また,技術戦略に基づいて技術の扱い方が立案された後,ロードマップに基づいて具体的な技術開発が進められることを理解する。
用語例:MOT(Management Of Technology:技術経営),技術ポートフォリオ,特許戦略,技術予測手法,プロセスイノベーション,プロダクトイノベーション

小分類13 「技術開発戦略の立案・技術開発計画」

1. 技術開発戦略・技術開発計画

1.1 未来予測の手法

未来予測の代表的な手法には以下のようなものがある。

未来予測の手法 説明
シナリオライティング ストーリーを作るようなやり方で,未来予測を行う方法。
数値的なデータの予測ではなく,質的な意味での未来を予測するのに用いる。
具体的なイメージが得られるという長所があるが,主観的になりやすいという欠点もある。
複数のシナリオ,多くの場合には3つのシナリオを作成する。
基本となるシナリオは,現在の変化の傾向が大きな乱れなしに将来まで維持されたらどうなるかというシナリオで,「平穏シナリオ(surprise-free scenario)」という。
平穏シナリオをもとにして2つの代替シナリオ(より急激に変化するシナリオ,より緩やかに変化するシナリオ)を作成する。
最終的な結果は,この2つの代替シナリオの間に落ち着くことを期待する。
デルファイ法 ①複数の専門家からの意見収集,②得られた意見の統計的集約,③集約された意見のフィードバック(集約結果を専門家に提供する)を繰り返して意見を収束させていくもの。
デルファイとは「神託」を意味して,「専門家」を「神」になぞらえている。
クロスセクション分析
(横断面分析)
先進事例を調査することでモデルを作成して,未来予測のための方法。
ある時点でデータを横断的(項目や範囲等をまたいで)に調査・記録し,データ同士がどのように影響し合っているかを分析する手法。
クロスセクション分析は時系列分析と対となる分析の方法。
時系列法 先進事例を調査することでモデルを作成して,未来予測のための方法。
特定のデータを時間経過ごとに調査・記録し,データが時間とともにどのように変化するかを分析する手法。
時系列分析はクロスセクション分析と対となる分析の方法。
代表的なモデルに,自己回帰(AR:Auto-Regressive)モデル,移動平均(MA:Moving Average)モデル,自己回帰移動平均(ARMA:Auto-Regressive Moving Average)モデルなどがある。

1.2 その他

• ブレーンストーミング
より多くの斬新なアイディアや意見を引き出すための手法。
参加者は,「批判禁止」「質より量」「自由奔放」「結合・便乗」を原則に, 自由にたくさんの意見を出し合う。
• ロールプレイング(Role Playing)
役割(ロール)を演じる(プレイ)ことによって気づきを促す学習手法。
例えば,営業研修などで営業を受ける顧客の役を演じることで,顧客の営業に対する視点を得る。
• 決定木
将来にわたる意思決定の各段階を樹木構造で示した図に基づいて,最適な意思決定の経路を求める。
• マトリックスデータ解析
予測項目間の影響を定量化してマトリックスを使って示し,予測項目間の波及効果をシミュレーションして定量的に示す。

すぎうら しげき <>