情報システムの運用(第9回)

システム企画(ストラテジ系・システム戦略)


配布資料

第9回(問1~問33)
解答なし解答あり解説(要ID・パスワード)

訂正

(なし)


中分類7 「システム企画」

【位置付け】

表: ITパスポート出題範囲(ストラテジ系)
共通キャリア・スキルフレームワーク 出題範囲(出題の考え方)
分野 大分類 中分類





1企業と法務 1企業活動
  • 企業活動や経営管理に関する基本的な考え方を問う。
  • 身近な業務を分析し,課題を解決する手法や,PDCA の考え方,作業計画,パレート図などの手法を問う。
  • 業務フローなど業務を把握する際のビジュアル表現について問う。
  • 財務諸表,損益分岐点など会計と財務の基本的な考え方を問う。
2法務
  • 知的財産権(著作権法,産業財産権関連法規など),セキュリティ関連法規(不正アクセス禁止法など),個人情報保護法,労働基準法,労働者派遣法など,身近な職場の法律を問う。
  • ライセンス形態,ライセンス管理など,ソフトウェアライセンスの考え方,特徴を問う。
  • コンプライアンス,コーポレートガバナンスなど,企業の規範に関する考え方を問う。
  • 標準化の意義を問う。
2経営戦略 3経営戦略マネジメント
  • SWOT 分析,プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM),顧客満足度,CRM,SCM などの代表的な経営情報分析手法や経営管理システムに関する基本的な考え方を問う。
  • 表計算ソフト,データベースソフトなどオフィスツール(ソフトウェアパッケージ)の利用に関する理解を問う。
4技術戦略マネジメント
  • 技術開発戦略の意義,目的などに関する理解を問う。
5ビジネスインダストリ
  • 電子商取引,POS システム,IC カード・RFID 応用システムなど,各種ビジネス分野での代表的なシステムの特徴を問う。
  • エンジニアリング分野や電子商取引での代表的なシステムの特徴を問う。
  • 情報家電や組込みシステムの特徴,動向などを問う。
3システム戦略 6システム戦略
  • 情報システム戦略の意義と目的,戦略目標,業務改善,問題解決などに向けた考え方を問う。
  • 業務モデルにおける代表的なモデリングの考え方を問う。
  • コミュニケーションにおけるグループウェアやオフィスツールなどの効果的な利用について問う。
  • コンピュータ及びネットワークを利用した業務の効率化の目的,考え方について問う。
  • クラウドコンピューティングなど代表的なサービスを通じて,ソリューションビジネスの考え方を問う。
  • システム活用促進・評価活動の意義と目的を問う。
7システム企画
  • システム化計画の目的を問う。
  • 現状分析などに基づく業務要件定義の目的を問う。
  • 見積書,提案依頼書(RFP),提案書の流れなど調達の基本的な流れを問う。

【小分類】

小分類22 「システム化計画」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) システム化計画
システム化計画では,対象業務を分析して情報システム戦略に基づいてシステム化構想及びシステム化基本方針を立案し,各システムの開発順序,概算コスト,効果などシステム化の全体像を明らかにすることを理解する。
用語例:スケジュール,体制,リスク分析,費用対効果,適用範囲,企画プロセス

小分類23 「要件定義」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 業務要件定義
業務要件定義では,経営戦略やシステム戦略,利用者のニーズを考慮して,システムに求める機能及び要件を定義することを理解する。
活用例:利用者の要求の調査,調査内容の分析,現行業務の分析,業務要件の定義,機能要件・非機能要件の定義,要件の合意

小分類24 「調達計画・実施」

【目標】
【説明】
【項目】
(1) 調達の流れ
調達の基本的な流れは,情報提供依頼(RFI:Request For Information),提案依頼書(RFP:Request For Proposal)の作成と配付,選定基準の作成,ベンダ企業からの提案書及び見積書の入手,提案内容の比較評価,調達先の選定,契約締結,受入れ・検収であることを理解する。
(2) 情報提供依頼
情報提供依頼は,提案依頼書の作成に先立って,考えうる手段や技術動向に関する情報を集めるために,ベンダ企業に対しシステム化の目的や業務概要を明示し,情報提供を依頼することであることを理解する。
(3) 提案依頼書
提案依頼書は,ベンダ企業に対し,導入システムの概要や提案依頼事項,調達条件などを明示し,提案書の提出を依頼するための文書であることを理解する。
(4) 提案書
ベンダ企業では,RFPを基にシステム構成,開発手法などを検討し,提案書を作成し,依頼元に対して提案することを理解する。
(5) 見積書
見積書は,システムの開発,運用,保守などにかかる費用を示す文書であり,取引先の選定や発注内容の確認にとって重要であることを理解する。

1. ソフトウェアのライフサイクル

[ソフトウェアのライフサイクル]
図: ソフトウェアのライフサイクル

  1. 企画プロセス
  2. 要件定義プロセス
  3. 開発プロセス
  4. 運用プロセス
  5. 保守プロセス

共通フレーム2007(Software Life Cycle Process - Japan Common Frame 2007:SLCP-JCF2007)

共通フレーム2007とは,コンピュータシステムの開発において,システム発注側(ユーザ)と受注側(ベンダ)の間で相互の役割や業務の範囲・内容,契約上の責任などに対する誤解がないように,双方に共通して利用できるよう用語や作業内容の標準化するために作られたガイドライン。

共通フレームの対象については,以下のように階層化して考えられている。

事業(ビジネス) > 業務 > システム(ITシステム,情報システム,コンピュータシステムなど) > ソフトウェア

また,共通フレームの内容も,以下のように階層化して作成されている。

プロセス > アクティビティ > タスク > リスト

共通フレームの構成は以下のとおりである。

表: 共通フレーム2007の構成
分類 ライフサイクルプロセス プロセス 視点
共通フレーム2007 I. 主ライフサイクルプロセス a. 取得プロセス
b. 供給プロセス
c. 契約の変更管理プロセス
【契約と合意の視点】
1. 企画プロセス
2. 要件定義プロセス
【企画と要件定義の視点】
3. 開発プロセス
4. 保守プロセス
【エンジニアリングの視点】
5. 運用プロセス 【運用の視点】
II. 支援ライフサイクルプロセス a. 文書化プロセス
b. 構成管理プロセス
 
c. 品質保証プロセス
d. 検証プロセス
e. 妥当性確認プロセス
f. 共同レビュープロセス
g. 監査プロセス
【品質管理の視点】
h. 問題解決プロレス
i. ユーザビリティ(使用性向上)プロセス
 
III. 組織に関するライフサイクルプロセス a. 管理プロセス
b. 環境整備プロセス
c. 改善プロセス
d. 人的資源プロセス
e. 資産管理プロセス
f. 再利用プログラム管理プロセス
g. ドメイン技術プロセス
 
IV. システム監査 システム監査プロセス 【システム監査の視点】
共通フレームの修整   修正プロセス  


2. 企画プロセス

企画プロセスでは,主に事業(ビジネス)を対象とする。

企画プロセスの手順(共通フレーム2007より)

表: 共通フレーム2007における企画プロセスの手順
プロセス アクティビティ タスク
1. 企画プロセス 1.1 プロセス開始の準備
  1. 企画作業の定義
  2. 必要な支援プロセスの実施
  3. 企画環境の準備
  4. 企画プロセスの実施計画の作成
1.2 システム化構想の立案
  1. 経営上のニーズ,課題の確認
  2. 事業環境,業務環境の調査分析
  3. 現行業務,システムの調査分析
  4. 情報技術動向の調査分析
  5. 対象となる業務の明確化
  6. 業務の新全体像の作成
  7. 対象の選定と投資目的の策定
  8. システム化構想の文書化と承認
  9. システム化推進体制の確立
1.3 システム化計画の立案
  1. システム化計画の基本要件の確認
  2. 対象業務の内容の確認
  3. 対象業務のシステム課題の定義
  4. 対象システムの分析
  5. 適用情報技術の調査
  6. 業務モデルの作成
  7. システム化機能の整理とシステム方式の策定
  8. システム化に必要な付帯機能,付帯設備に対する基本方針の明確化
  9. サービスレベルと品質に関する基本方針の明確化
  10. プロジェクトの目標設定
  11. 実現可能性の検討
  12. 全体開発スケジュールの作成
  13. システム選定方針の策定
  14. 費用とシステム投資効果の予測
  15. プロジェクト推進体制の策定
  16. 経営事業戦略,情報戦略,システム化構想との検証
  17. システム化計画の策定と承認
  18. プロジェクト計画の作成と承認

システム化構想の立案の作業

システム化構想の立案では,以下のような作業を行う。

  1. 経営上のニーズと課題の確認
  2. 情報技術動向の調査分析

システム化計画の立案の作業

システム化計画の立案では,以下のような作業を行う。

  1. 対象業務の分析
  2. 業務モデルの作成
  3. 適用範囲の決定とシステム方式の策定
  4. プロジェクトの目標設定
  5. 全体開発スケジュールの作成
  6. 投資対効果の検討
  7. プロジェクト推進体制の策定
  8. リスク分析

プロジェクトの目標設定

プロジェクトの目標設定では,QCDと呼ばれる以下の3項目の目標値と優先順位を決定する。

  1. 品質(Quality)
  2. コスト(Cost)
  3. 納期(Delivery)

リスク分析

リスク対応の方法には,大きく分けて以下の4種類がある。

リスク対応 説明
リスク回避
(Risk Avoidance)
リスク自体が発生しないようにすること。
主に,リスク発生可能性が高く,リスク発生時の影響度が大きい場合に行う。
たとえば,インターネットからの不正侵入への対策として,インターネットに接続しないようにシステムを変更することなど。
リスク低減
(Risk Reduction)
リスクの発生確率を低くすること,および,リスク発生時の損害の程度を低くすること。
主に,リスク発生可能性が中程度で,リスク発生時の影響度が中程度~高い場合に行う。
たとえば,自然災害によるサーバ停止への対策として,距離が離れた複数の地域にデータセンタを設置する,情報漏えいへの対策として,データを暗号化しておくなど。
リスク移転
(Risk Transfer)
リスクを第三者に移すこと。
主に,リスク発生可能性が低く,リスク発生時の影響度が大きい場合に行う。
たとえば,自然災害に備えて保険に加入する,ウイルス感染に備えてPCの管理・運用を他社に委託するなど。
リスク保有
(Risk Retention)
リスク対策を行わないこと。
主に,リスク発生可能性が低く,リスク発生時の影響度も小さい場合に行う。
対策のコストに見合ったリスク対策の効果が見込めない場合や,現状として有効なリスク対策がない場合には,リスク保有を選択することがある。

3. 要件定義プロセス

要件定義プロセスでは,主に業務を対象とする。

要件定義プロセスとは

要件定義プロセスでは,新たに構築する業務,システムの仕様,及びシステム化の範囲と機能を明確にし,それらをシステム取得者側の利害関係者間で合意する。

要件定義プロセスの手順(共通フレーム2007より)

表: 共通フレーム2007における要件定義プロセスの手順
プロセス アクティビティ タスク
2. 要件定義プロセス 2.1 プロセス開始の準備
  1. 要件定義作業の定義
  2. 必要な支援プロセスの実施
  3. 要件定義環境の準備
  4. 要件定義プロセス実施計画の作成
2.2 利害関係者要件の定義
  1. 利害関係者のニーズの識別と制約事項の定義
  2. 業務要件の定義
  3. 組織及び業務環境要件の具体化
  4. 機能要件の定義
  5. 非機能要件の定義
  6. スケジュールに関する要件の定義
  7. 実現可能性とリスクの検討
2.3 利害関係者要件の確認
  1. 要件の合意と承認
  2. 要件変更ルールの決定

要件定義プロセスの作業

要件定義プロセスでは以下のような作業を行う。

  1. 利害関係者のニーズの識別と制約事項の定義
  2. 業務要件の定義
  3. 組織及び業務環境要件の具体化
  4. 機能要件の定義
  5. 非機能要件の定義
  6. スケジュールに関する要件の定義
  7. 実現可能性とリスクの検討

業務要件定義

業務要件とは,新しい業務のあり方や運用をまとめたうえで,業務上実現すべき機能のこと。

例えば,業務内容(手順・入出力情報・組織・権限)や業務特性(ルール・制約)などが業務要件に相当する。


4. 調達計画・実施

調達の流れ

  1. 「情報提供依頼(RFI)」の作成と送付
  2. ベンダからの情報の提供
  3. 「提案依頼書(RFP)」の作成と送付
  4. 選定基準の作成
  5. ベンダからの「提案書」「見積書」の入手
  6. 提案内容の比較評価
  7. 調達先の選定
  8. 契約締結(「契約書」

[ソフトウェア調達の手順]
図: ソフトウェア調達の手順

情報提供依頼(RFI:Request For Information)

提案依頼書(RFP)の作成に先立って,考え得る手段や技術動向に関する情報を集めるために,ベンダ企業に対しシステム化の目的や業務概要を明示し,情報提供を依頼する。

提案依頼書(RFP:Request For Proposal)

提案依頼書は,ベンダ企業に対し,導入システムの概要や提案依頼事項,調達条件などを明示し,提案書の提出を依頼するための文書である。

提案依頼書(RFP)への記載項目

  1. 背景・目的
  2. 対象業務の概要
  3. 必要な機能
  4. システム条件
  5. サービスレベル
  6. 予算・支払条件
  7. 納期・スケジュール
  8. 検収条件
  9. 契約・法務関連(守秘義務,著作権・特許等)
  10. 運用・保守
  11. その他

提案書

ベンダ企業では,RFPを基にシステム構成,開発手法などを検討し,提案書を作成し,依頼元に対して提案する。

見積書

見積書は,システムの開発,運用,保守などのかかる費用を示す文書であり,取引先の選定や発注内容の確認にとって重要である。


5. その他

販売流通業の業務フロー

(1) 注文受付
顧客からの注文を受け付ける。
(2) 在庫引当
在庫から注文分だけ商品を確保(引き当て)する。
(3) 出荷指示
商品の出荷を指示する。
(4) ピッキング
倉庫や棚から商品を取り出す。
(5) 積載
商品を配送するトラックなどに積み込む。
(6) 配送
顧客の指定した場所に商品を送り届ける。
(7) 納品
顧客に商品を引き渡す。
• 棚卸し
ある時点での在庫数を実際に確認して,帳簿上の在庫数との差を確認する作業。

すぎうら しげき <>